「ウェブらしさを考える本」発売しました

突然ですが、本が出ました。「ウェブらしさを考える本」といいます。

前著「ウェブがわかる本」から5年。今回はサイエンスコミュニケーターの池谷瑠絵さんとの共著です。基本的にはぼくが池谷さんにひたすら話し、それを池谷さんが文字に起こして構成し、それを2人でひたすら加筆修正する、という形で作りました。

すでに一部のニュースサイトでも取り上げられていますが、この本の最大の(?)目玉として、発売と同時に全文をウェブで無料公開しました。PDFでもEPUBでもなく、HTMLでの公開です。中身は本と一字一句変わりません(図表が一部なかったりしますが)。公開期間は決まっていません。最低でも1年以上は公開し続けよう、という話になっています。

そんなめちゃくちゃな、と思われる方もいるかもしれません。正直、自分で提案しておきながら本当に実現するとは思いませんでした。あとがきでも触れましたが、このような無理を聞いていただいた丸善出版のみなさんには本当に感謝しています。

もともと、打ち合わせの時に「ウェブについての本なのにウェブで読めないのは悲しい」という話をぽろっとしたのがきっかけです。また、電子書籍をめぐる議論や、ネットで公開しても本の売れ行きは変わらないという海外の事例が報道されるなど、ネットと本の関係はいろいろと入り組んでいて、どこに向かっていくのかを知りたいとずっと思ってきました。そんな中で今回の話をいただき、ひとつの実践としてウェブでの公開を考えた次第です。

1冊を公開したところで何か劇的なことが起こるわけでもないでしょうが、ここからフィードバックを得て何らかの知見が引き出せればと思います。そしてもちろん売上も…。もしウェブ版を読んで気に入っていただけたら本を買っていただけるとありがたいです。また、表紙のイラストがとてもすばらしいのでジャケ買いしていただくのも大歓迎です。

さてさて、肝心の内容について、著者自らが言うのもなんですが、よくわかりません。書いている時も刷り上がった見本を手にとった時も「これは何の本なのだろう…」と考えていましたがいまだに結論は出ていません。

5年前の「ウェブがわかる本」では、すごい題名をつけられてしまったなあと思いつつも、ある程度ウェブの歴史を整理して語ることができていました。見落としている点もあるのかもしれませんが、当時はウェブ自体がそれなりに連続的に進歩していたのだと思います。しかしいまはまったく違います。あちこちで同時多発的に、あるいはまったく質の異なるものが生まれては消えていく状況の中で、本という形で1本の線をつないでいくことが難しくなりました。とはいえ、それぞれには何らかの共通点があるはずで、その存在するかしないかわからない共通点をとりあえず「ウェブらしさ」と名付け、ティム・バーナーズ=リーや学術コミュニケーションにその源泉を求めてみた、という大枠です。

あとは、続々と生まれるウェブサービスを前にして、自分がどう使ってどう感じたのかをなるべくそのまま表現することをテーマにしました。なんだか個人的な探求を人前で晒すような形ですごく恥ずかしいし、感じ方は人それぞれでこれが唯一絶対の答とは思いません。それでも、考え方の一端をお見せすることで、読まれた方自身がウェブとどう付き合っているのか、どこに価値を見出しているのかを改めて考えるきっかけになればと思います。

入門書でも専門書でもない不思議な本ですが、一度ウェブ版にアクセスしてみてください。

それではよろしくお願いします!

ウェブらしさを考える本 ーつながり社会のゆくえー