2015年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。

まずは昨年の振り返りから。2014年もいろいろなことがありました。

オープンデータ関係については、これまで政府・自治体の動きを後押しすることが中心でしたが、もうその必要がないくらいの段階に来た感があります。「なぜやるのか」から「どうやるのか」あるいは「どう活用するのか」に議論が移っていること、そして何よりも各地に志を同じくする人々が増えていて、実質的な活動にコミットされていることを心強く思っています。個人的にはこういった流れを公共セクターの外に伝え広げていくことができればと、企業向けの講演をいくつかさせていただいたり、データエクスチェンジコンソーシアムの顧問をお引き受けするなど、新しい分野に入りつつあるところです。NPOリンクト・オープン・データ・イニシアティブ(LODI)としては、data.go.jp正式版の構築に協力するなどの具体的なお仕事とともに、横浜でのLinked Open Data(LOD)の一般向け講座(全6回)、人文科学とコンピュータシンポジウムと連携したアイデアソンの開催など、当初の設立目的であるLODの普及啓発活動を行っています。

もうひとつの本業である図書館仕事もオープン化の潮流と無関係ではいられませんでした。日本の大学・研究図書館の蔵書データにオープンライセンスをつけるための手続きを2013年後半から進めていましたが、9月にCC BY 4.0でリリースすることができました。オープンの概念がないころから存在しているレガシーデータのオープン化はこれからも大きな課題であり続けると思いますが、先鞭がつけられたのではないかと。

CiNiiは5年ぶりにお化粧直しをして、いまどきのフラットデザインになりました。が、本質はそこではなく、クラウドを活用した無停止運用ができるようになったこと、電子ジャーナルの情報を共有し、そのデータをCiNiiに取り込むようになったことの2点が大きなトピックでした。どちらも外から見ればあまりにも地味でほとんど気づかれることもないでしょう。けれども、データを作る側としての積年の課題にようやく手が着けられたことで、CiNiiに生かされている自分なりの恩返しを始めることができたかなと思います。

前回の振り返りでは個々の仕事をつなげていきたいと書きましたが、結果的には意識しなくても勝手につながって収拾がつかなくなるという趣でした。「オープンデータと図書館」という原稿を書いたこともありましたが、オープンアクセス、研究データ、ビッグデータと守備範囲は広がるばかりで、でも本質的には同じところに行き着くのかも知れません。しばらくはデータの流れに身をまかせるのもいいのかなと思ったりしています。

2014年はウェブ25周年でしたが、今年はぼく自身のウェブ利用歴が20年です。ちょうど、年末に発行されたライブラリー・リソース・ガイド第9号でインタビューを受けました(なんと司書として!)。その最後に自分なりのミッションステートメントというか、いまやっていることの筋にあたる部分が言語化されているので引用を。意味はよくわかりません…。

Webのおかげで人生の方向が決まった感があり、Webに感謝してもしきれないので、その感謝の気持ちをどう表すかというときに、自分が関わる対象を「Webっぽくする」ということをいろいろなところでやってきたいと思います。今だと、図書館とかライブラリーをWeb風にするということですが、政府を自治体をオープンデータでWeb風にするとか、実際にかたちにして伝えながら、「それはいいね」と言ってもらうように活動していきたい。研究活動そのものがもっとWebっぽくならないか、というのも重要です。「Webの研究をすること」と、「研究がWebっぽい」のは違う話で、例えば人文科学だってもっとWebっぽいやり方はあると思います。関わったものすべてをWebっぽくするのが僕のライフワークであって、Webのおかげでいいことがあったと実感してもらえるようにしていきたいな、と思っています。

それでは今年もよろしくお願いします!

2014年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。

まずは昨年の振り返りから。2013年もいろいろなことがありました。

数年前から取り組んでいたオープンデータ・Linked Open Data(LOD)関係の動きはここに来て想像もしないスピードで進展しました。象徴的なのは経済産業省のデータカタログOpen DATA METIが年始にリリースされてから、日本政府全体のデータカタログdata.go.jpが年末にできるまでにそれこそ1年かかっていないという事実です。どちらもほんの少しだけ関わりましたが、最初の海のものとも山のものともつかない状態から議論を重ねて制度化を進めて実現まで持っていくお役所のプロセスを垣間見ることができたのが自分にとっての大きな収穫でした。一方、自治体レベルのオープンデータもとんでもない勢いで増えていますが、どこも市民・住民が主体となった健全な取り組みになっているように思います。そんな中で、研究プロジェクトLODACや2012年に立ち上げたLODIとしてはオープンデータの概念を伝える活動が多かったのですが、チームで翻訳したLinked Dataの本も発売されたこともあり、今後はより具体的な技術支援にシフトしていければと思っています。

Linked Data: Webをグローバルなデータ空間にする仕組み

Linked Data: Webをグローバルなデータ空間にする仕組み

 

 

政府や自治体が自律的に回るようになったら、次は専門分野のオープンデータ化に進まなければなりません。ぼくとしては自身が深く関わっている図書館分野で実践すべく、国立国会図書館イベントでお話しさせてもらったり、あるいは大学図書館の蔵書データ公開への道筋をつくっているところです。ネット社会の中での図書館のあり方がよく議論されますが、こういった活動を通じて何らかの結果を出してみたいと思っています。また、LOD関連で人文系の研究会に呼んでいただくことが増えましたが、そろそろ何か貢献できるものがないといけないなあとも思います。

もはや本業ともいえるCiNiiなどの学術情報サービスの仕事は我慢の1年でした。4月にシステムの全面入れ替えがあり、その準備と後始末で忙殺されていました。裏側では新しいUI/UXの探求や本格的なクラウドの活用などいろんな仕込みをしていましたが、成果を見せられるのはこれからになりそうです。そうそう、5月には研究所の図書室長という仕事もいただき、リアルの空間でも何かしてみたいところです。

ここ数年、いろんなジャンルの仕事をしてきましたが、それらをつなげるという意識が希薄だったように思われるのが反省点です。2014年はウェブの25周年ということもあり、原点回帰ではありませんが能動的かつ積極的にリンクさせていくことを目標にしたいと思います。

それでは今年もよろしくお願いします!

2013年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。

まずは昨年の振り返りから。2012年もいろいろなことがありました。

何より自分にとって驚きだったのは、日本版オープンデータの動きです。主に政府や地方自治体が持つデータの公開という意味で使われているこの言葉、欧米で普及が始まっていたことから注目はしていたのですが、一気に日本に入ってきたように思います。その影響もあって、オープンデータ流通推進コンソーシアム経済産業省公共データワーキンググループ内閣官房電子行政オープンデータ実務者会議の委員(下っ端ですが)に名を連ねたり、先進的な取り組みを行っている鯖江市に何度か足を運んだりと、これまでにない経験をさせてもらっています。こういった流れの中で、オープンデータもどうせ公開するならウェブ標準のLinked Open Data(LOD)の形で出してもらえるように支援したいという思いから、8月にリンクト・オープン・データ・イニシアティブというNPOを立ち上げ、活動を始めました。これらが花開くのはもう少し先のことになるとは思いますが、2013年を勝負の年と位置づけて積極的に動いていく所存です。

4月には2冊目の著書となる「ウェブらしさを考える本」が出版されました。この本に関しては以前にもブログに書きましたが、「ウェブらしさ」という言葉がなんとなく気に入っていて、これまでの社会の仕組みの中にウェブらしさをどう取り入れていくかを考えるのがこれからの自分の役割になるのかなと思っています。そこでオープンデータの仕事やCiNiiを始めとする図書館の仕事がつながっていくのではないかと。

図書館関係については大きなニュースのない1年でした。とはいえ何もしていなかったわけではなく、この4月に控えたシステムリプレイスの準備に忙殺されています。情報インフラとして動き続けて当たり前、止まったら大きな影響が出てしまうという強烈なプレッシャーと、絶え間ないコスト削減要求の中でどのようにバランスを取ればいいのか、悩みながらスタッフと取り組んでいます。また、電子ジャーナル・電子ブックを大学図書館全体の枠組みで扱うという積年の課題にも着手し、こちらも多くの方々と議論しながら進めています。

それにしても、どの仕事をとっても3年前には想像もしていなかったことばかりで、果たして自分が適任なのかどうか正直なところ自信はありません。それでも、ウェブに導かれてここまで来たのだと思ってベストを尽くしていきたいと思います。

それでは今年もよろしくお願いします!

「ウェブらしさを考える本」発売しました

突然ですが、本が出ました。「ウェブらしさを考える本」といいます。

前著「ウェブがわかる本」から5年。今回はサイエンスコミュニケーターの池谷瑠絵さんとの共著です。基本的にはぼくが池谷さんにひたすら話し、それを池谷さんが文字に起こして構成し、それを2人でひたすら加筆修正する、という形で作りました。

すでに一部のニュースサイトでも取り上げられていますが、この本の最大の(?)目玉として、発売と同時に全文をウェブで無料公開しました。PDFでもEPUBでもなく、HTMLでの公開です。中身は本と一字一句変わりません(図表が一部なかったりしますが)。公開期間は決まっていません。最低でも1年以上は公開し続けよう、という話になっています。

そんなめちゃくちゃな、と思われる方もいるかもしれません。正直、自分で提案しておきながら本当に実現するとは思いませんでした。あとがきでも触れましたが、このような無理を聞いていただいた丸善出版のみなさんには本当に感謝しています。

もともと、打ち合わせの時に「ウェブについての本なのにウェブで読めないのは悲しい」という話をぽろっとしたのがきっかけです。また、電子書籍をめぐる議論や、ネットで公開しても本の売れ行きは変わらないという海外の事例が報道されるなど、ネットと本の関係はいろいろと入り組んでいて、どこに向かっていくのかを知りたいとずっと思ってきました。そんな中で今回の話をいただき、ひとつの実践としてウェブでの公開を考えた次第です。

1冊を公開したところで何か劇的なことが起こるわけでもないでしょうが、ここからフィードバックを得て何らかの知見が引き出せればと思います。そしてもちろん売上も…。もしウェブ版を読んで気に入っていただけたら本を買っていただけるとありがたいです。また、表紙のイラストがとてもすばらしいのでジャケ買いしていただくのも大歓迎です。

さてさて、肝心の内容について、著者自らが言うのもなんですが、よくわかりません。書いている時も刷り上がった見本を手にとった時も「これは何の本なのだろう…」と考えていましたがいまだに結論は出ていません。

5年前の「ウェブがわかる本」では、すごい題名をつけられてしまったなあと思いつつも、ある程度ウェブの歴史を整理して語ることができていました。見落としている点もあるのかもしれませんが、当時はウェブ自体がそれなりに連続的に進歩していたのだと思います。しかしいまはまったく違います。あちこちで同時多発的に、あるいはまったく質の異なるものが生まれては消えていく状況の中で、本という形で1本の線をつないでいくことが難しくなりました。とはいえ、それぞれには何らかの共通点があるはずで、その存在するかしないかわからない共通点をとりあえず「ウェブらしさ」と名付け、ティム・バーナーズ=リーや学術コミュニケーションにその源泉を求めてみた、という大枠です。

あとは、続々と生まれるウェブサービスを前にして、自分がどう使ってどう感じたのかをなるべくそのまま表現することをテーマにしました。なんだか個人的な探求を人前で晒すような形ですごく恥ずかしいし、感じ方は人それぞれでこれが唯一絶対の答とは思いません。それでも、考え方の一端をお見せすることで、読まれた方自身がウェブとどう付き合っているのか、どこに価値を見出しているのかを改めて考えるきっかけになればと思います。

入門書でも専門書でもない不思議な本ですが、一度ウェブ版にアクセスしてみてください。

それではよろしくお願いします!

ウェブらしさを考える本 ーつながり社会のゆくえー

人工知能学会誌の特集「Twitterとソーシャルメディア」でゲストエディタをやりました

人工知能学会誌2012年1月号の特集「Twitterとソーシャルメディア」でゲストエディタをやりました。

ゲストエディタといっても誰に書いてもらうかを決めて原稿を取り立てて修正をお願いして、ぐらいのことなので大したことはやってないです。が、最終的にはおもしろい記事が5本も集まって立派な特集になりました。あとは前座として短い前書きを書いたり。ちなみにこの前書き、学会誌にもかかわらず文中にTwitterアカウントを入れてみました…。

記事のタイトルは下記の通り。正式な目次はこちら(PDF)

  • Twitterにおける情報伝播
  • ソーシャルメディアの政治的活用
  • ソーシャルメディアと分断化する社会的リアリティ
  • ソーシャルメディアと匿名性
  • ソーシャルセンサとしてのTwitter

mixiGREE、そしてFacebookが登場したのが2004年、Twitterが2006年、それぞれ流行ったのはもう少し後の話としても、2012年にもなって学会誌が取り上げるのはどうなのか?と思われるかもしれません。もはやTwitterもソーシャルメディアも新しくも何ともないわけですが、成熟しつつある分野だからこその課題や可能性を議論する場にしたいと思ってこのような構成にした次第です。あまり見たことのないテーマの組み合わせになったと思うのですが、どうでしょうか。

さてこの特集、対象が新しい分野ということもあって自然と若手研究者にお願いすることになったのですが、5本のうち2本は博士課程の学生さんによるものです。学生が解説記事を書くことはほとんどないのですが、なぜお願いしたかというと、かくいうぼくが学生の時に書かせてもらったからです。当時は右も左もわからずに相当苦労しましたが、そのおかげで事実はどうあれ第一人者として認められるようにがんばろうと思ったし、実際学生時代の最後から就職してしばらくはこれで食えたという実感があります。そんなこともあって受け取ったバトンを次に回したいなという思いがありました。

業界誌なのでなかなか読む機会がないかもしれませんが、大学にいらっしゃる方はぜひ手にとって見てください。購読している大学図書館の一覧はこちら。いまから人工知能学会に入会するというのも大歓迎です!

大向一輝, 松尾豊. 「Twitterとソーシャルメディア」にあたって. 人工知能学会誌. 2012, vol. 27, no. 1, p. 34.

武田英明, 大向一輝. Weblogの現在と展望: セマンティックWebおよびソーシャルネットワーキングの基盤として. 情報処理. 2004,  vol. 45, no. 6, p. 586-593.

 

2012年のごあいさつ

あけましておめでとうございます。

まずは昨年の振り返りから。2011年もいろいろなことがありました。

3月11日の東日本大震災。その時ぼくは研究所の居室にいて、幸い身のまわりに被害はなかったのですが、翌週からの計画停電のためにCiNiiをはじめとする各種サービスを一時的に休止することになり、多くのユーザにご迷惑をおかけしてしまいました。正直なところ、こういった事態をあらかじめ想定できていたとはいえません。サービスの性質上、NIIだけでなく学術情報を扱うコミュニティ全体の課題として取り組む必要があるので、今後はステークホルダーとのコミュニケーションを深めながらこの問題に対応していこうと思います。

11月にリリースしたCiNii Booksは、ある意味でそういったメッセージを込めて設計したものです。15年目を迎えるWebcatの後継として、NIIと大学図書館、そしてユーザをつなぐメディアになれるよう、関係者とのコミュニケーションを密にして進化させていきたいと思っています。また懸案だった電子リソース管理の問題も調査を進めており、今年から具体的な動きができるように準備しています。

研究面では、2010年にスタートしたLinked Open Dataに関するプロジェクトLODACが育ってきました。メンバーも増え、美術館・博物館情報だけでなく地域情報、生物多様性などさまざまな分野のLOD化を進め、知見を積み上げています。講演や発表も順調に増え、LODといえばLODACと認識してもらえるようにさらに活動していきます。

グルコース社はとても忙しい1年でした。スマホ・タブレット向けアプリの実績が増え、もともとの強みであったウェブサービスとの連携など、多様なニーズに応えられるようになりました。一方、自分たちのブランドで製品を出すための時間が取れなかったのが反省点で、これは今年の課題です。

個人的には、学術情報とLODに軸足を置きながら、各分野とのコラボレーションを進めていくというスタイルが確立した1年だったように思います。とはいえ、クリアな成果が出ているわけではないので、ほんとうに使えるサービス、ほんとうに使えるデータを作り出すことが2012年の第一の目標です。そのために、自分の中で分断気味のコミュニティをまとめ直し、強いチームを作っていくことも重要だと思います。

また、ここしばらくTwitterだけしか使っていないような状態でしたが、まとまった言葉を発信していくことを再開したいと思います。あと論文や解説記事など過去に書いたものをアーカイブとして公開しはじめましたので、本ブログとあわせて見ていただけるとうれしいです。

それでは、課題だらけの1年になりそうですが、今年もよろしくお願いします!