次期CiNiiの試験公開をはじめました

この4月にリニューアルする、国立情報学研究所の論文検索サービスCiNii(サイニィ)の試験公開をはじめました。

http://ciexam.nii.ac.jp/ http://ci.nii.ac.jp/(追記:正式版を公開しました) screenshot

CiNiiのリニューアルは2年がかりの大仕事で、ぼく個人としても研究所での仕事の大半はこれでした。このような形で公開することができて、まずは一段落というところです。

新しいCiNiiですが、基本的には論文検索サービスを粛々と提供するということで機能的に大きな変化はありません。長らくの課題だった負荷対策を万全にするのと、デザイン・ユーザビリティをよくするのが第一のテーマでした。

それに加えて、ぼくがどうしても入れたかったのがメタデータを提供する機能です。検索機能はOpenSearchに対応し、RSS 1.0(すなわちRDF)とAtom 1.0を返すようにしました。OpenSearchのリファレンスにはRSS 2.0とAtom 1.0の例が書かれていることが多いのですが、RSS 2.0を削ってRSS 1.0を入れたのはセマンティックウェブ屋のこだわりです。また、書誌パーマリンク(論文の詳細情報)の内容はRDFで入手することができます。このRDFでは著者情報がFOAFで記述されていて(簡単なものですが)、ソーシャルグラフの抽出に使えるようになっています。あと、検索結果のページと書誌パーマリンクXHTMLに準拠していて、それぞれxFolkとhAtomというマイクロフォーマットを埋め込んでいます。どう使われるのかはまだ想像がつきませんが、いいアイデアを募りたいところです。

今回はあくまでも試験公開ということで、現状のCiNiiの機能をフルに備えているわけではありません。論文本体のPDFへのリンクが機能していなかったり、参考文献・被引用文献のリストが表示されなかったりします。その意味では、まだ実用に耐えうる状態にはなっていません。大学図書館の方が新入生用に資料を作れるように事前に公開したという意味合いもあるので、そのあたりはご了承ください。

また、試験公開版と正式版ではハードウェアも異なります。レスポンスがいいという反応をいただいていますが、正式版はもっと速いです(というか大量のアクセスにも耐えられる)。

いまは正式公開に向けて各種システムとの連携のための作業が進んでいます。ここが一番大変な部分なのですが、なんとか乗り切って4月のはじめにはお目にかけたいと思っています。

Fastweetの反応・次のバージョンについて

グルコース初のiPhone/iPod touchアプリ「Fastweet」、おかげさまで順調にダウンロード数を伸ばしています。誰も買ってくれなかったらどうしよう、と心配していたフル機能版「Fastweet 2K」の方もぼちぼちとお買い上げいただいており、どうもありがとうございます。

全世界同時リリース!ということで(iTunes App Storeに出せば勝手にそうなるのですが)、英語版・日本語版を作ったり、海外のメディアにもプレスリリースを出してみたりと慣れないことをひととおりやってみました。いまのところ、海外の大手サイトに取り上げられるという結果には至っていませんが、英語やフランス語や中国語の反応が目新しく、いろいろ追いかけているところです。(国内のメディアには多数取り上げていただきました。ありがとうございました!)

いただいた反応は叱咤激励を交えていろいろですが、「大量に読む」という基本的なコンセプトは多くの方々に受け入れられたかなあと思っています。2000件では全然足りないという方もちらほらおられますが…。その反面、文字を小さくして一画面に情報を詰め込むことについては異論が多く、ここは自分の思い込みで設計してしまった部分だったと反省しています。

あと、日本のユーザーの方から「Favorite(お気に入り)」の要望を、海外のユーザーの方から「ReTweet(引用)」の要望を多数いただきました。興味深いのは、逆のパターンが一切なかったこと。ある意味で似たような効能がありながら、求められる機能が異なるということは、twitterの使われ方自体が国によって違うのだろうかと考えさせられます。

いろんなご意見をふまえて、すでに次のバージョンの準備が進んでいます(開発のshnくんが相当がんばっています)。改善点は以下の通りです。

  • フォントサイズを変更可能に
  • 「Favorite」「ReTweet」機能の追加
  • 更新時に不安定になる問題を解消

iTunes Storeの審査が通り次第お目にかかれると思いますので、どうぞよろしくお願いします。

グルコースのiPhone・iPod touchアプリ「Fastweet」

http://glucose3.com/fastweet/

グルコースより、はじめてのiPhoneiPod touch向けアプリ「Fastweet」をリリースしました。一部の人々にはなくてはならないつぶやき系サービス「twitter」用の読み書きアプリです。

以下、twitterをご存じない方はすみません。iPhoneiPod touchを持ってない方もすみません。(両方をクリアする人ってどれくらいいるんだろう…)

iPhone向けtwitterアプリというとすでにいくつもあって、なんでいまさら作るのかという気がしなくもないですが、どうもこれまでのアプリは自分の使い方に合ってないなあという気がしたのです。PCでは常時クライアントを立ち上げて、リアルタイムで書き込みが見られたらそれでいいのですが、モバイル環境はそうではなくて、仕事の合間にちょっと見る、移動の合間にちょっと見る、というように隙間の時間にまとめて見たくなります。また寝てから起きるまでという巨大な隙間もあって、その間の書き込みはたぶんものすごい量になっています。ぼくがFollowしているのはせいぜい150人程度ですが、8時間寝たら(寝過ぎだ)軽く500ぐらいは書き込みがあります。

そういう大量の書き込みを、熟読とは言わないまでもさらっと流し読みしたい、あとの機能はどうでもいい、ということで、「シンプル・大量・高速」をモットーにしたtwitterアプリを作ることにしました。シンプルというところでは、顔写真はでかでかと載せないようにして(別にいいですよね)、文字は極力小さくして、一画面の情報量を最大限にしました。大量は文字通り大量に、2000個の書き込みが保存できるようにしました。あとは、その状態でも高速に動作するようなつくりにするのはもちろん、50個ごとにページを切って永遠にスクロールし続けなくてもよいインターフェイスにしました。一応、隠し機能として、上部のバーの数字(1 - 50と書いてある部分)をタップするとすぐに最新の記事に戻れるようになっています。もう一点、iPhone本体を振ったら新着記事を取りに行ってくれたりもします。(設定で自動更新することもできます)

あと、これは小さなこだわりなのですが、内蔵のブラウザでウェブページを表示するときに、Google Mobile Gatewayを通してコンテンツを携帯向けに変換してから表示します。iPhone内蔵のSafariはとても便利ですが、やっぱりPC向けに作られたページの読み込みは遅いし、不安定になりがちです。そんなこともあって外部リンクを表示するのに躊躇してしまいがちなのですが、少しでも軽く速く読み込めるようにして、twitter経由の情報収集を活性化したいという思いがあります。Google Mobile Gatewayも完璧ではないようで、変換できないページもあるようですが、どう問題を回避するかはこれから考えていきたいと思います。

そんなこんなで、Fastweetではフル機能版・無料版の2種類を用意しました。無料版ではすみません、一度に読み込み・保存できる書き込みの数が200に限定されています(ほんとにすみません)。まずは無料版をお試しいただいて、気に入っていただけたらフル機能版(230円)の購入をぜひともご検討ください。

なぜフル機能版を有料にするのかというと、これは完全にこちら側の理由なのですが、一度ユーザーの方から直接お代をいただいてサービスを提供してみたいという一点に尽きます。ウェブの世界では多くのものが無料になっていて、自分もユーザーとしては無料の方がいいに決まっているのですが、開発者自身が無料であることに慣れてしまっているというか、お代をいただいてサービスを提供するというモデルをはなっからあきらめてしまってるんじゃないかと思うことがあります。そこにきて、iTunes App Storeでは直接の課金もできるようになっているし、リハビリではないですが、きっちりとユーザーの方と向き合う練習(?)ができればと思っています。

開発を始めてから手続きのあれこれを含めてけっこうな期間がかかってしまいましたが、こうしてリリースできたのはとてもいい経験になりました。これから第2第3のアプリを作るとともに、お代をいただいてサービスをするということについても真面目に取り組んでいきたいと思います。ということで、まずは「Fastweet」をお試しください!そして忌憚のないご意見をいただければと思います。

http://glucose3.com/fastweet/

プロジェクトマネージャー募集中

求人のお知らせです。ぼくが働いている国立情報学研究所(NII)で、プロジェクトマネージャーを募集しています。

NIIでは、CiNiiをはじめとしてさまざまな学術情報サービスを作ったり作り直したりしているわけですが、基本的には図書館業務に精通したNIIの「なかのひと」と、システムを作る外部のベンダーさんの共同作業という、古き良きスタイルでやってきました。それはそれでうまくいっていたのですが、ウェブ時代になると環境が激変し、「なかのひと」もシステムのことを理解したうえで要求を伝えないとまともなサービスが作れないという状況になってきました。ここ2〜3年は、そういうこともあってぼくのような研究側の人間が(あるいは「ウェブを知っている」ということになっている人間)が中間の立場に入り込んでやりくりしていたのですが、究極的にはプロの人間が「なかのひと」側に入った方がよかろう、ということで今回の求人に至った次第です。

お仕事の中心は、要求仕様をまとめて入札のための仕様書に仕上げていく部分になるだろうと思います。要求仕様といっても、いまどきは「なかのひと」だけではなくユーザーの声を聞いたり想像したりしながら数年先を見据えて考えなければならないし、仕様書の方は要求を並べるだけではなく、それを実現するためのシステムアーキテクチャの大枠まで決めておかないとまた環境が変わったときに身動きが取れなくなったりします。その意味では、どこまで先を見通してシステムを構想できるか、というのが求められているスキルであると言えます。

そんなわけで、プロジェクトマネージャーという呼称はありつつも、なんというかジョブ・ディスクリプションできっちりと定義できるような仕事ではないのかもしれません(しかも3年の有期雇用だし…厳しいご時世です)。キャリアパスの一環として捉えてもらいつつ、一緒に悩んで考えてくれる人を募集したいなあというのが個人的な思いです。

応募サイトは下記のリンクから。ページの下の方にぼくの写真があって、キャプションが「博士:大向より」となっているのが謎です…。腕に覚えのある方はぜひ。

http://type.jp/job/detail.do?id=171589

人工知能学会全国大会・特別セッション「研究とビジネスの境界で」

今年の6月に香川県高松市第23回人工知能学会全国大会(JSAI2009)が開催されます。毎年250〜300件の研究発表が行われるにぎやかな学会ですが、今年度はプログラム委員の一員として特別企画を担当しています。題して「研究とビジネスの境界で ── AIで起業・AIで事業化 ──」。

このセッションでは、専門家同士が議論する普段の研究発表とは違って、ビジネスに携わる人々が何を見て何を評価しているのかを知る機会にしたいと思っています。セッションの内容としては、PlaceEngineで有名なクウジット株式会社の末吉さんをお招きして講演いただくほか、研究・ビジネスの両方の経験者によるパネルディスカッション(不肖わたくしめも参加予定)を行います。また、このセッションでの研究発表も募集しており、充実した議論ができるよう通常よりも質疑応答の時間を長く取っています。

セッションの詳細はこちらのページをご覧ください。発表を希望される方は、発表申込サイトから「一般口頭発表セッションのお申し込み」を選択し、「特別セッション・研究とビジネスの境界で」に希望のチェックを入れてください。発表申込は1/26まで。論文提出は4月になります。

関連エントリ:人工知能学会全国大会・近未来チャレンジ「Community Webプラットフォーム」

人工知能学会全国大会・近未来チャレンジ「Community Webプラットフォーム」

今年の6月に香川県高松市第23回人工知能学会全国大会(JSAI2009)が開催されます。ここ数年、ぼくは近未来チャレンジという枠で「Community Webプラットフォーム -ブログ・SNS・ソーシャルウェアの未来形-」というセッションのオーガナイザーをしています。この近未来チャレンジはおもしろい仕組みで、提案者はセッションを企画して論文を募集し、当日は普通に研究発表を行うのですが、最後にセッションの参加者に投票してもらい、その結果来年度もこのセッションをやってもいいかどうかが決まります。幸いなことに「Community Webプラットフォーム」は4年連続で生き残り、5年目の今年もセッションを開くことになりました。

セッションのテーマは、ウェブを舞台としてコミュニティが知識を作り出したり、知識によってコミュニケーションが活性化されたりする状況を想定して、何らかの分析を行ったりシステムを提案する研究を広く募集するというものです。「想定して」と書きましたが、もはやこういう状況は日常そのものになっていて(はじめてセッションを提案したときは「近未来」だったのですが…)、日々の生活の場であるウェブをどのように研究するか、という方法論を考える場として捉えてもらえればよいのかなと考えているところです。

セッションの詳細ページの下の方にこれまでの論文リストへのリンクを載せていますが、はっきり言って何でもありです。なにより、人工知能学会の中でウェブに携わっている研究者が大集合する場所なので、発表・聴講問わずたくさんの方々にお越しいただけるとうれしいです。

発表を希望される方は、発表申込サイトから「『近未来チャレンジ』セッションのお申し込み」を選択し、「(サバイバル)Community Web プラットフォーム」に希望のチェックを入れてください。発表申込は1/26まで。論文提出は4月になります。

発表募集:「Community Webプラットフォーム -ブログ・SNS・ソーシャルウェアの未来形-」

関連エントリ:人工知能学会全国大会・特別セッション「研究とビジネスの境界で」